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【Report】鯖江の眼鏡体験記

文責:近衞 忠大


先日、眼鏡の町として知られる福井県・鯖江を訪ねた際に、当時、福井県眼鏡協会・会長を務められていた谷口康彦さん(谷口眼鏡)から眼鏡のフレームをいただいた。


(豊かな山々に囲まれる鯖江は眼鏡の町として世界的に知られている)


鯖江との御縁はコピーライター・加藤麻司さんを通じて。


加藤麻司さんは取材で鯖江を訪れたのをきっかけに、鯖江と、眼鏡産業を支える人々に惚れ込んでしまった。そしてプライベートで足繁く通い、すっかり地元の人々の心をつかみ、その結果福井県眼鏡協会に見込まれて『鯖江の眼鏡 一般社団法人 福井県眼鏡協会公式ガイドブック』(2021年・福井県眼鏡協会との共著)を上梓した。


加藤さんとはドバイの競走馬のプロジェクトでご一緒して以来のお付き合い。加藤さんは同世代。長くスイスの時計メーカーのコピーを書いていたので、私の第二の故郷スイスという共通点もある。そんな加藤さんに誘われて鯖江に行き、工場見学をさせていただき、私も鯖江のファンになったという訳だ。


(左:谷口眼鏡・谷口康彦さん、右:近衞 鯖江の眼鏡工場にて)


さて、いただいたフレームだが谷口眼鏡が得意とする「セルロースアセテート」という綿花やパルプといった植物由来のプラスチックで出来ている。


レンズは表参道にある福井県眼鏡協会の東京ショールーム『GLASS GALLERY 291』で入れていただいた。ここには、国家資格である「眼鏡作製技能士」を持つ眼鏡のプロが常駐しているのがとても嬉しい。


(左:GLASS GALLERY 291 眼鏡作製技能士・末田広志さんによるフィッティング最終調整)


私はサングラスにしようと思っていたが、夜のドライブに適した特殊なレンズがあると聞いてそちらにした。見た目はほぼ無色だが、夜間にまぶしい対向車のライトなどが眩しくなくなる。休暇中に家族を乗せて夜間ドライブする機会が多いので非常にありがたい。


しかしこれで完成ではない。ここから眼鏡作製技能士の方が個々の顔に合わせて微調整をしてくれる。セルロースアセテートには適度な弾力性があり、60度ほどに温めると手で曲げることができる。この性質を活かしてフィッティング。ほんの僅かな曲げで明らかに違いが出る。


(鯖江の技と真心に出会える 東京・表参道『GLASS GALLERY 291』)


鯖江の眼鏡は、工場から出荷された段階で完成ではなく、この最終調整をもって完成なのだ。眼鏡だけではなく、購入した後の調整や、使っていく中での調整も含めてのクラフツマンシップこそがメイド・イン・サバエのクオリティーなのだということが実感できた。


この週末、鎌倉からの夜間ドライブが快適だったのは、言うに及ばない。


                        


近衞 忠大


1970年生、東京都出身。公家であり五摂家筆頭・近衞家の長男として生まれながら、スイスで幼少期を過ごしたトリリンガル。武蔵野美術大学卒業後、テレビ局やプロダクションにて、テレビ番組、インターネット動画制作、ファッションブランドの大型イベントなど、幅広い制作現場を経験。語学力をかわれ、古典的な出自に反して、外資系企業の日本マーケティングや、日系企業や公共機関の海外向けブランディングなど、国際的なプロジェクトに数多く関わる。2018年にクリエイティブブティック・株式会社curioswitchを創業し代表取締役就任、現職。

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